互角局面集の活用法

December 10, 2016

コンピュータソフト同士の対局の場合、序盤の展開は各ソフトの定跡で決められていて、ソフトの組み合わせによりかなり限定された戦型を主に見ることになります。定跡を用いて各ソフトの得意な戦型に持っていくのはソフト開発者の手腕が問われる重要な要素ですが、ソフトの中終盤の力量を一般的な局面で評価したいと考えたとき、決まった戦型での勝率だけで決めるのはどうかなという気もします。ユーザー側から見たときの、現在の強豪ソフトの主要な使用目的は自局の検討、プロ棋戦鑑賞の手助けなどにあることを思うと中終盤における汎用的なソフトの評価法があってもよいと思います。

 

やねうら王開発者の磯崎氏が互いに互角な24手目の10818局面集を少し前に公表されました。公開されているファイルはsfen形式で書かれていて、このファイルをどのように活用できるか数か月わからないでいました。まふ定跡のお手伝いするようになってShogiGUIの定跡機能を少しづつ理解するようになり、磯崎氏のsfenファイルをShogiGUIの定跡ファイルに変換することにより、すべてのUSI対応エンジンに対し24手目のランダムな互角局面から対局を始めることができるのがわかり、これは上のような目的にはちょうど良いと思えるようになりました。ある意味ShogiGUIの標準機能を使うだけですので、わざわざブログで取り上げるようなものではないと思いますが、使い方がわかるまでに時間がかかったことを思うと一応まとめておいてもよいかと思いました。

 

まず磯崎氏が公開されているファイルをDLし、解凍すると

records2016_10818.sfen

というファイルがあらわれます。次にShogiGUIを起動、メニューより定跡(J)→新規作成(N)を選択、初期局面として平手を選択。

再びメニューより定跡(J)→ファイルから追加(D)を選択、

次の画面が出ます。

 手数は24手しか入っていないので24にする(もっと大きな数字にしても問題はない)。棋譜にコメントもないので棋譜コメントのスイッチはオフ。このあと、ファイルを選択してrecords2016_10818.sfenを読み込ませます。少しまつと完了しましたとか出るので、再びメニュ→定跡(J)→保存(S)で適当に名前(例えばやねうら王互角局面集などとして)を付けて保存。再びメニュー→定跡→定跡管理(M)を選び、自分の作った定跡を登録。(定跡「ねうら王互角局面集」が登録される)

以上で準備は終わりです。

 

あとはこれを用いた対局ですが、メニューから対局(P)→対局を選ぶ対局画面になります。

 

この方法の利点は、ソフトはShogiGUIに登録してあるソフトであれば何でも使えることです。ただし設定でもともとソフトに付随する定跡を使わないオプション(OwnBook=off)にしておくこと、および上の画面にあるように先手定跡、後手定跡をともに先ほど作った互角局面集から構成された定跡を登録することです。あとは連続対局の設定をして対局開始ボタンを押すと対局が始まります。

 

お互いに同じ定跡に従って指していくので、24手までノータイムで定跡に登録されている手を指していき、25手目から時間を使って思考し始めます。24手目の局面は定跡に手を加えない限り全くランダムに選ばれます。 ShogiGUIの定跡ファイルは自由に編集できるので、さらに不要な進行の枝狩りや重みづけをすれば各人のお好みの戦法から出発する対局を集中的に見ることができると思います。例えば横歩取りや角換の評価をするのはどのソフトがベストかなどといった情報が得られるはずです。

 

実際に技巧と浮かむ瀬を一手5秒で対局させてみたところ、現段階では33-1-33で全く五分となりました。(最終的には200局くらいやる予定。)激指の棋譜集解析で採用された戦法を見ると、横歩、角換わりなどが少なく矢倉が多い(3割くらい)構成です。戦法の選択がこれで適切かどうかは私にはよくわからないので、詳しい方の解析がなされるまではレーティング付けなどには当面使用しないつもりです。あと、気が付いた点としては後手の勝率がかなり高い(65%)という点です。対局数を増やさないとはっきりしたことは言えませんが、互角局面と言いながら何らかの原因で結果的に後手が良いように選ばれている可能性はあるかもしれません。

 

(追記12/12) 200局対局させた結果

Ukamuse SDT4 114-4-82 技巧 (レート差56)

先手勝ち89 (45%), 後手勝ち107 (54%)

 

戦型 矢倉:39, 横歩11, 相掛5, 角換 8, 振り飛車29, 居飛車急戦24, 相振り飛車21, その他45など

 

コメント:浮かむ瀬と技巧のレート差56というのは序盤ではまらない場合の実力差ということで、技巧+まふ定跡の対やねうら王の成績とほぼ同じ。このレート差が本来の実力差というのはもっともらしいと思う。3すくみ現象はこの方法だと縮小すると考えられることもあるし、この設定でレートを測りなおすのは中終盤のソフトの強さの評価になり面白いと思う。

上で観測した後手勝率が高い問題は対局が増えるにつれ縮小したがある程度は残った。さらに対局数を増やさないとはっきりしたことは言えない。

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