対局相手としてのフリーソフト

August 26, 2017

前回の記事では将棋のフリーソフトにどうやって親しんでいくかについて簡単な解説を書きました。フリーソフトの発達のお陰で将棋の鑑賞や研究がこれまで無かったほど便利になりました。一方で、将棋ソフトの役割のもう一つの重要なのは対局のお相手です。このような用途ではShogiGUIや将棋所とエンジンを組み合わせて対局するのはちょっと工夫が必要です。なぜかというと

  • 上記の目的でインストールした将棋エンジンは通常ものすごく強い。

  • しかも手を緩めてくれない容赦なく攻めてくる。

 前回紹介した激指・定跡道場には適宜弱くしたモードがあり、レーティング戦と称して弱い設定から勝ち進んでいくうちにレートが上がっていく、という循環でユーザの棋力を上げてくれます。また、AI将棋でもレーティング戦があるのですが、こちらはランダムに様々なレベルのエンジンと対局して、強い相手や弱い相手とは駒落ち戦で様々な相手とお相手できます。しかし、これらは1万円前後もするソフト、この記事では無料のソフトで頑張ってみたいと思います。

 この記事の趣旨とは違いますが、フリーソフトでユーザーとの対局に適しているのはPC用のものではなくスマホアプリなのかもしれません。個人的にはぴよ将棋が好きで、適宜弱い設定をしたソフトと戦える、棋譜解析でどこでミスが有ったのかを教えてくれる、対局結果からレーティングを出すなど必要十分な機能を持っています。また、将皇は対戦モード以外に実戦詰将棋、勝ちきれ将棋など初心者向け機能が充実しています。PC用のソフトでスマホ並みにお手軽に遊びたい、という需要に現段階で最も適しているのはぴよ将棋と同じエンジンを用いたK-shogiでしょう。ダウンロードして、解凍、実行ファイルをダブルクリックするだけです。エンジン本体の棋力は私の測定でR2400強、24レート換算でR2600くらい(CPUの強さによるがi7-6700 4スレでアマチュア六段相当)、おそらくAI将棋と同じくらいの棋力だと思います。

 さて、本題に戻ります。上で述べたようにShogiGUIや将棋所で使う無料の将棋エンジンの場合、少々工夫が必要です。フリーソフトでは強いソフトに注目が集まりがちですが、私のレート表を見れば明らかな通り、強いものから弱いものまで様々な思考エンジンが公開されています。エンジンを試す楽しみは開発者たちのいろいろな工夫・設定を味わうことができる点で、開発者に寄り添う楽しさがある点にあると思います。また、ソフトのレーティングは多数の対局で測られているので色々なエンジンとの対局で自分の棋力の絶対的な評価ができるのが良い点だと思います。以下、各棋力でどんなエンジン・フリーソフトについておすすめを述べます。

 

入門者向け:将棋エンジンの中では16式いろはが唯一の選択になると思います。このエンジンは相手に勝つというよりは、許されている指し手の中から良さげな手をなんとなく指している感じで、コマの動かし方を理解して勝とうという意欲があれば勝てます。問題は何手くらいで勝てるかですので工夫をしながら瞬殺する快感を覚えましょう。このソフトで将棋に慣れてきたら、ぴよ将棋(K-shogi)のレベル1、Web将棋のこまおハム将棋に進みましょう。私のレート表ではこのあたりがR100~R300くらいかなと思います。

 

級位者向け:ハム将棋に勝てるようになったらレサ改(LesserKai) R400、海底 (WCSC27版 R700、SDT5版R950)、Shogi686 SDT5 (R850) が面白いと思います。また有名なBonanzaやBlunderは思考深度(何手読むか)を調整する機能があって、Depth 1(一手しか読まない)設定であれば海底くらいまで弱くできます。ソフトが一手読みの場合、自分の価値判断がしっかりできて三手読めば勝てる(はず)です。また、また、思考深度を上げていくと深く読まないと勝てなくなるので、詰将棋の3手詰、5手詰、7手詰のように、レベルを上げていくことができます。Apery(浮かむ瀬)に手を加えて級位者でも対局できるようにしたukamuse-kai(浮かむ瀬改)は他のエンジンにはないオプションが可能です。ソフトが読む局面数(ノード数)で強さを調整するだけでなく、どれくらいの頻度で悪手を指すのか、(人間は必ず悪手を指すので、この機能は重要)、大局観に対応する評価関数(駒得だけの評価から、上位ソフトの鍛え抜いたものまで)、棋風に対応する定跡も自分で選べます。Aperyの評価関数は自分で鍛えることもできるので、色々評価関数を作ってその大局観を味わう楽しみもあります。ある意味でAIを自作してプラモデル的に楽しむマニアックな喜びがあります。BonanzaやBlunderと同様に、強くしようと思えばいくらでも強くなるので末永く遊べるエンジンと言えましょう。

 なお、このレベルではWeb将棋ではきのあ将棋がいろいろな棋力・棋風のバリエーションがあるので個人的にはおすすめです。また、スマホアプリの将皇はWeb版があります。インターフェース付きのソフトではK-shogi以外にうさぴょんも楽しいです。

 

有段者向け:級位者と有段者の区別を将棋エンジンで見ようとすると、ソフトの思考時間一手5秒のssp, mssに勝てるかどうかで判断できると思います(級位者なのであくまで想像。なおsspの方がmssよりも少し強い)。私のサイトのレーティングではR1300あたりに相当します。基本的にほとんどの将棋エンジンはこれより強いので、私のレート表を参考に対局するエンジンを選んでくれでいただけたらと思います。R1300 初段、R1550 二段、R1800 三段、R2000 四段、R2200で五段くらいかなと想像します。(有段者のご意見をお待ちしています)思考深度が調整できるソフトとしては技巧にも挑戦できるようになります。ただ技巧は大局観が優れているので三手よみ(Depth 3)でも三段くらいあるように思えます。R2600からはプロ級の強さに突入です。

Please reload

特集記事

以前より、私のツィートや記事にコメントをいただいている、コンピュータ将棋に大変詳しい方(まふさんと名乗られています)が、技巧の定跡の開発を始められました。定跡を作るためのデータとして私がレーティング計測用に作った棋譜ファイルを使っていただいているという縁もあり、新定跡のテストを私が担当することになり...

技巧新定跡(まふ定跡)

December 8, 2016

1/10
Please reload

最新記事

September 30, 2018

Please reload

アーカイブ